2019年のことです。天皇杯のベスト8が出そろいました。
ヴィッセル神戸vs大分トリニータ
サガン鳥栖vs清水エスパルス
鹿島アントラーズvsHONDAFC
Vファーレン長崎vsヴァンフォーレ甲府
という組み合わせです。JFLに参加しているHONDA FCがベスト8に勝ち残っています。
少し気が早いのですが、HONDA FCが仮に天皇杯を制した場合、ACL2020の出場権はどうなるのでしょうか?
奇しくも韓国FA杯が似たような状況にあります。韓国FA杯は既に決勝の組合せが決まっており、大田コレイル(ナショナルリーグ=3部相当)vs水原三星(Kリーグ1)という対戦になっています。
という訳で色々調べたことをまとめます。
○Jリーグクラブライセンス交付規則を紐解く
Jリーグ公式サイトに最新のクラブライセンス交付規則が掲載されています。
・規約規程
(https://www.jleague.jp/aboutj/#content-regulation)
・Jリーグクラブライセンス交付規則
(https://www.jleague.jp/docs/aboutj/clublicense2019_01.pdf)
※2012年2月1日に施行され、最新版は最終ページの[改正]の日付が2018年12月6日となっているものが最新です。
まずは、この規則の関連条項を抜き出してみます。
第1条〔趣旨〕
本交付規則は、JFA基本規程第72条第4項およびJリーグ規約第11条に基づき、J1およびJ2の参加資格である「Jリーグクラブライセンス」(以下「Jライセンス」という)の要件、申請手続、審査手続その他の必要事項について定めるものである。
第2条〔AFC規則との関係〕
(1) 本交付規則は、AFC規則の定めに従って、Jライセンスのみならず、AFCチャンピオンズリーグの出場資格(以下「AFCライセンス」という)に関しても必要な事項を定めるものである。この関係において、本交付規則は、AFC規則に規定されるAFCライセンスの各基準およびライセンス交付プロセスにおける必須要件を全て規定する。
(2) Jライセンスに関する基準がAFCライセンスの基準の最低要件より厳格化されまたはAFCライセンスの基準の最低要件に追加されている場合は、当該厳格化または追加された基準は、AFCライセンスに準用されるものとする。
⇒法律的な用語が並ぶので日本語的に直感分かりにくいのですが
Jライセンスという定義はJ1ライセンス、J2ライセンスを指していることが分かります。J3はどうなるの?というのは先に譲るとして、Jリーグのライセンスの方がAFCより厳しい場合は、Jリーグライセンスを持っていればACLに出れますよということが定義されています。
・参考:List of Licensed Clubs for the 2019 AFC Champions League
※2019年シーズンのACLライセンス保有クラブ一覧
2019年シーズンのACLライセンス保有クラブは
札幌、仙台、秋田※、山形、鹿島、水戸※、栃木※、群馬※、浦和、大宮※、千葉、柏※、東京、東京V、町田※、川崎、横浜FM、横浜FC※、湘南※、甲府※、松本※、長野、新潟、富山※、金沢※、清水※、磐田※、名古屋※、岐阜、京都、G大阪、C大阪、神戸、鳥取※、岡山※、広島※、山口、讃岐※、徳島、愛媛※、福岡、北九州、鳥栖、長崎、熊本、大分、鹿児島※、琉球
となっています。※マーク付きは条件付き付与と記されています。
48クラブを見ると、J1ライセンスだから※がない訳ではないことが分かります。ACLの基準に照らし合わせてということですね。
○J3ライセンスはどうなのか
では、J3ライセンスはどうなるのか?というと別に定められています。
・Jリーグ入会(J3リーグ参加)の手引き
上記19P以降に記述されています。
⇒29Pの10条に、出場が認められた場合には、AFCに公認されている競技会に出場すること(ただし、親善試合には関係しない)と記載があります。J3ライセンスのみを持っているクラブでも、ACLのライセンスをクリアしている場合は、ACLライセンスに準拠するはずです。
ただ、2019年シーズンでJ3ライセンスの保有クラブは、八戸、盛岡、福島、YS横浜、相模原、藤枝、沼津、奈良、今治の9つですが、上記ACLライセンスには記載がないためレアケースなのかもしれません。
要するに、J3に所属していてもJ2ライセンス以上保有していれば(例えば秋田、鳥取)、仮に天皇杯に優勝すればACLに出場できることになります。長野や北九州のようにJ1ライセンスをもっていれば当然出場できるはずです。
では、ライセンスをもっていないクラブやJ3ライセンスのクラブは絶対にACLに出れないのかという点に移ります。これは抜け道というか支援規定が別途定められています。
○AFCクラブ協議会への出場資格
第7章 AFCクラブ競技会への出場資格
第29条〔AFCクラブ競技会への出場資格の承認〕
(1) Jライセンスを交付されたクラブは、国内競技会の結果、AFCクラブ競技会への出場資格を得ることを条件として、AFCライセンスを交付されたものとみなされる。
(2) 前項の規定に関わらず、当該クラブにAFCライセンスが交付されるか否かに関する最終決定を行う権利は、AFC規則に基づきAFCに留保される。
(3) Jライセンスが交付されていないクラブは、AFCクラブ競技会に出場することができない。ただし、第30条にいうAFCクラブ競技会出場の臨時承認の対象クラブはその限りではない。
⇒つまり
・Jライセンスをもっていれば、国内大会=J1、天皇杯で出場資格を取った際に、AFCライセンスが交付されるよ
・Jライセンスがなければ出場はできないが、30条に抜け道があるよ
・すべての決定権はAFCが持ってるからね
と書かれています。
それでは、30条を見てみましょう。
第30条〔AFCクラブ競技会出場の臨時承認〕
(1) Jライセンスを保有していないクラブが、国内競技会の結果によってAFCクラブ競技会への出場資格を得た場合、Jリーグは、JFAを通じ、当該クラブに代わり、AFCに対し、AFCライセンスの臨時適用を申請することができる。
(2) 前項にいうAFCライセンスの臨時適用の詳細は、AFC規則(※)第7条第4項「AFCクラブ競技会出場のためのクラブライセンス制度の臨時適用」によるものとする。
※「AFC規則」とは、AFC Club Licensing Regulations のこと
⇒これはまさに天皇杯を想定した規定になります。Jのライセンスを持たないクラブはJ1リーグには出れませんので。すなわち国内競技会=天皇杯で出場資格を得た場合=優勝した場合、臨時承認を申請することができると書かれています。
○AFC CLUB LICENSING REGULATIONS(Edition 2016)
臨時承認は、Jリーグではなく、JFA経由でAFCにライセンスの臨時申請をするとあります。詳細は、AFC規則(英語)を読むようにと書かれているので、AFC規則を引っ張り出します。
AFC規則は2016年版が公開されています。当然英語ですので関係する条項をGoogle先生経由で意訳します。
○AFC CLUB LICENSING REGULATIONS(Edition 2016)
・https://www.the-afc.com/afc/documents/PdfFiles/club-licensing-regulations-2016-33840
Article 7 License Applicant and Licensee
4. EXTRAORDINARY APPLICATION第7条 ライセンス申請者およびライセンシー
4項 特別な申請
1. If a club qualifies for an AFC Club Competition on sporting merit but has not undergone any licensing process at all or has undergone a licensing process which is lesser/not equivalent to the one applicable for top division clubs, because it belongs to a division other than the top division, the AFC Member Association of the club concerned may on behalf of the club request an extraordinary application of the Club Licensing System in accordance with Annex 4.
当該クラブが国内競技会の結果、AFC大会の資格を持っているが、ライセンスを受けていない、もしくはトップディビジョンクラブに該当するものよりも少ない/同等ではないライセンスを持っている場合、当該クラブのサッカー協会は、当該クラブに代わり、付属書4に従いクラブライセンスの特別な申請を要求することができる。
2. Based on such an extraordinary application, AFC may grant special permission to the club to enter the corresponding AFC Club Competition subject to the relevant AFC Club Competition Regulations. Such an
extraordinary application applies only to the specific club and for the season in question.
特別な申請に基づき、AFCは、関連するAFCクラブ競技規則に従って、対応するAFCクラブ競技会に参加する特別な許可をクラブに与えることができる。特別な申請は、特定のクラブとそのシーズンのみに適用される。
3. The AFC Entry Control Body shall make all final AFC decisions in this regard. Such decisions shall be made in accordance with the Procedural Rules Governing the AFC Entry Control Body.
AFCエントリーコントロールボディはすべての最終的なAFC決定を下すものとする。決定は、AFC出場管理機関を管理する手続き規則に従って行われるものとする。ANNEX 4 – EXTRAORDINARY APPLICATION OF THE CLUB LICENSING SYSTEM
付録4-クラブライセンスの特別な適用
1. The minimum licensing criteria applicable shall be the same as in Part Three of these regulations.
適用される最小ライセンス基準は、パート3の規制と同じでなければならない。
2. Member Associations must notify the AFC of any potential extraordinary applications in writing latest by 31 August of the year preceding the season to be licensed.
(当該クラブの所属する)サッカー協会は、ライセンスを取得するシーズンの前の年(=ACL2020であれば2019年)の8月31日までに、AFCに特別申請を書面で通知しなければならない。
3. Member Associations must provide the criteria for the extraordinary application to the club(s) concerned. They must prepare the club(s) concerned for the extraordinary application procedure.
(当該クラブの所属する)サッカー協会は、当該クラブへの特別申請の基準を提供しなければならない。特別申請の手続きのために、準備しなければならない。
4. The club(s) concerned must provide the necessary documentary proof to the Member Association. The Member Association will assess the club(s) against the minimum criteria in Part Three of these Regulations.
当該クラブは、必要な証拠書類を(当該クラブの所属する)サッカー協会に提出しなければならない。サッカー協会は、これらの規則のパート3の最低基準に照らしてクラブを評価する。
5. The Member Association shall forward the following (in English) to the AFC by the 30 September of the year preceding the season to be licensed:
(当該クラブの所属する)サッカー協会は、ライセンスを取得するシーズンの前の年の9月30日までに、以下を(英語で)AFCに転送するものとします。
a) a written petition to the AFC Entry Control Body duly signed and dated by the club requesting it to grant a license to participate in the corresponding AFC Club Competition. Such request must provide:
i. the name and address of the club;
ii. the identity of any club(s) directly affected by its petition;
iii. its full written argument with reference to the relevant regulations;
iv. all documentary evidence provided to the Member Association;
a)AFCクラブ大会に参加するためのライセンスを付与することをクラブに要請する書面による請願書。要求には以下を提供する必要がある。
1)クラブの名前と住所。
2)請願によって直接影響を受けるクラブの身元。
3)関連する規制に関する完全な書面による主張。
4)会員協会に提供されたすべての証拠書類。
b) a recommendation by the Member Association (including the dates and names of the persons that assessed the club);
b)会員協会による推薦(クラブを評価した人の日付と名前を含む)
c) any other documents requested by the AFC.
c)AFCが要求したその他の文書。
6. If during this extraordinary application procedure any such club is eliminated on sporting merit, the AFC Member Association concerned shall notify the AFC CL Administration immediately, and the procedure is immediately terminated, without further decision. Any such terminated procedure cannot be resumed or restarted at a later stage.
6.特別な申請手続き中に、クラブが大会に敗れた場合、関係するAFC会員協会はAFC CL事務局に直ちに通知し、手続きは直ちに終了します。終了した手順は、後の段階で再開または再開できません。
とあります。
少し長くなりましたが、要は8月31日までにHONDA FCが日本サッカー協会経由で申請をあげているかどうかになりそうです。申請を上げている場合は9月30日までに結果が出るようです。
○スタジアムはどこになるのか
で、申請をしていた場合スタジアムはどこかという話があります。
○AFC Stadium Regulations
(https://www.the-afc.com/afc/documents/PDFFiles/afc-stadium-regulations-24051)
○AFC Champions League Competition Regulations
(https://www.the-afc.com/afc/documents/PDFFiles/afc-champions-league-2019-competition-regulations)
これだけで1記事書ける分量になってしまうので、思い切り割愛しますがACLのスタジアム基準はJリーグと比べると結構緩いです。
5,000人以上の固定席を有していれば(他にもいくつか条件がある。以前あった背もたれ条項はなくなった模様)OKなのですが、HONDA FCのホンダ都田サッカー場は4,000人収容、かつ、ベンチシートのため、都田では開催はできないのではないかと思います。代替地を探すと、エコパあたりになるのかな。
最後に、申請をしなかった場合、かつ、天皇杯で優勝した場合はどうなるのかということですが、過去のケースからすると天皇杯準優勝チームに権利が移るのではなく、リーグ戦の4位が繰り上がります。
2018年のACLですが、イランのカップ戦(ハズフィーカップ)を優勝したのは、ナフト・テヘランでしたが、AFCライセンスを取得出来なかったため、イランリーグ(ペルシアン・ガルフ・プロリーグ)3位のトラクター・サジが繰り上がりでグループステージから出場、同リーグ4位のゾブ・アハンが繰り上げでプレーオフに出場したケースがあります。
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