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求む新しいビジネスモデル 2017年度(平成29年度)Jリーグ クラブ経営情報開示

2018reysol

・17年度(平成29年度)Jクラブ経営情報開示(公式
・16年度(平成28年度)Jクラブ経営情報開示(公式
・15年度(平成27年度)Jクラブ経営情報開示(公式
・14年度(平成26年度)Jクラブ経営情報開示(公式
・13年度(平成25年度)Jクラブ経営情報開示(公式
・12年度(平成24年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・11年度(平成23年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・10年度(平成22年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・09年度(平成21年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・08年度(平成20年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・07年度(平成19年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・06年度(平成18年度)Jクラブ個別情報開示(公式
・05年度(平成17年度)Jクラブ個別情報開示(公式

2017年度のJリーグ 各クラブの個別経営情報が発表されました。

営業収入
2017年度のレイソル営業収入は、34.54億円と2016年度の28.74億円から5.8億円の増収となりました。優勝特需の2011年度(35.43億円)、スタジアム拡張効果の2012年度(35.51億円)に次ぐ営業収入です。

ただ、もろ手を挙げて喜ぶ訳にはいきません。営業収入の多い順でみると、浦和79.7億(66.06億)、神戸52.37億(38.65億)、鹿島52.28億(55.82億)、川崎51.23億(42.54億)、G大阪49.66億(51.46億)、マリノス47.65億(46.96億)、名古屋45.94億(47.13億)、FC東京45.88億(45.41億)、清水40.1億円の9クラブが40億円越えと軒並み営業収入を増やしており、17年度J1平均営業収入は過去初めて40億超えの40.82億円となっています。順番としては、13位。昨年の15位よりはジャンプアップしています。辛うじて鳥栖に売り上げで抜かれてはいませんが、来年は間違いなく抜かれてしまうでしょう。

では、内訳をみていきます。営業収入における今年度の注目点は何が増えてV字回復したかです。収入の内訳の推移は以下の通り。

     収入 広告 入場 配分 アカデミー その他(物販)
 J1平均 40.82 18.13 8.04 4.74 1.60 8.32(3.44)
 -------------------------
 17年度 34.54 19.54 5.54 4.66 0.26 4.54(0.77)
 16年度 28.74 19.29 4.35 1.85 0.30 2.95(0.61)
 15年度 30.19 19.28 5.18 1.86 0.34 3.53
 14年度 31.65 19.43 4.66 2.01 0.66 4.89
 13年度 34.12 19.47 6.46 2.04 0.71 5.44
 12年度 35.51 19.89 5.76 2.34 0.74 6.78 ※スタジアム改修
 11年度 35.43 18.78 4.96 2.30 0.74 8.65
 10年度 27.43 19.98 2.91 1.17 —- 3.37 ※J2在籍
 09年度 28.59 17.63 4.74 2.09 —- 4.13
 08年度 29.97 18.74 4.60 2.36 —- 4.27
 07年度 31.43 19.30 4.11 2.58 —- 5.44
 06年度 32.44 25.02 2.84 1.39 —- 3.19 ※J2在籍
 05年度 38.74 17.82 5.29 2.50 —- 13.13

レイソルでの経年変化を見てみると、増えたのは入場料収入とJリーグ配分金とその他売上になります。それぞれ0.8億、2.8億と1.5億くらいです。

・入場料収入
こちらは0.8億円ほど増えています。12年度より少し少なく15年度よりやや多い金額です。2016年度のレイソル観客動員はJ1リーグ戦で10727.9人、2017年度は同じ条件で11819.8人と1,000人ほど増えてましたんでその影響と思われます。昨秋は完売が多かったというのもあるでしょう。
となるとチケット代金を値上げするか、主催試合が大きく増えない限りここはこれ以上はあまり増加が見込めない数字だといえます。主催試合は増えませんから値上げするしかないわけです。

・Jリーグ配分金
これはいわゆるDAZNマネーです。すべてのJクラブで配分金が昨年度より大きく上乗せされています。J1チームだと平均で4.74億円となっておりますので、レイソルだけ増えたという訳ではありません。

・その他収入
これもいつも書いますが、レイソルの営業収入は、「その他収入」に大きく依存しています。特に、「その他収入」のうち賞金と移籍金に依存します。例えば、2005年度の13億円は初代ドゥドゥの移籍金(ドゥドゥは05年夏にレンタル先のレンヌからCSKAに完全移籍しています。)と降格時に移籍していったメンバーの移籍金が入っていると思われますし、2011年度の8.65億円は、優勝やクラブワールドカップ出場による賞金になります。
昨年度より若干増えているのは、武富の移籍金でしょうか。
ちなみにDAZNマネーによる理念強化配分金(17年4位)は含まれていません。

ゲキサカの昨年の記事によると
J1上位クラブが受けることになる「理念強化配分金」は最長3年間の傾斜配分が決定。同年度の審査(※)を通過する必要があることから、支払い開始は翌年になるが、今季の1位チームには18年に10億円、19年に4億円、20年に1.5億円が渡ることになる。
また「理念強化配分金」は年間4位のチームにまで支払われ、今季の2位チームは18年に4億円、19年に2億円、20年に1億円。同3位チームには18年に2億円、19年に1.5億円で20年の配分金はない。同4位のチームは18年の1.8億円のみとなる。この比率は3年間適用される。

物販の数字も出ていますが微々たるものしか増えていないことが分かります。
まぁ毎年言ってますが、営業収入的には大きな増額がなかなか見込めにくい環境だといえます。
(ここは三協フロンテアに代わった翌年度の個別経営情報を見てみたいところです)
営業収入と主要な収入内訳をグラフにしてみました。

グラフにすると、DAZN特需で持ち直したように見えます。2011年に優勝して増えたのと同じような増え方をしています。

営業費用
支出の方ですが、こちらも大きく増えています。16年度28.30億円から34.40億円と6.1億円の増加。諸経費で多少増えているところもありますが、大きく増えているのはチーム人件費になります。

    営業 試合経 T運営 A運営 T人件 販管費
 J1平均 40.43 3.47 3.38 1.20 19.14 13.11
 17年度 34.40 1.58 1.83 0.33 23.08 7.58
 16年度 28.30 1.32 1.80 0.39 17.53 7.26
 15年度 30.83 1.67 2.32 0.40 18.88 7.56
 14年度 31.95 1.38 2.09 0.39 20.59 7.50
 13年度 33.80 1.98 2.66 0.40 21.18 7.58
 12年度 35.27 1.74 2.25 0.38 20.47 10.43
 11年度 33.91 1.53 2.68 0.36 19.19 10.15
 10年度 26.98   (7.24)   14.85 4.89 ※J2
 09年度 29.30   (8.32)   15.80 5.18
 08年度 30.48   (8.43)   16.94 5.11
 07年度 31.05   (9.48)   16.93 4.64
 06年度 34.62   (8.60)   21.88 4.14 ※J2
 05年度 38.58   (N.A)   (N.A) 4.60
※11年度以前は試合経費、チーム運営費経費、アカデミー運営費の内訳が発表されていません。

グラフだとこんな感じです。

構成要素で大きな割合を占めるチーム人件費は、23.08億円と昨年度の17.53億円から5.5億円ほどの増加となっています。ネルシーニョ体制からアカデミー出身体制に切り替えて徐々に減らしてきましたが、ここでメチャクチャ増えています。ちなみにJ1 18チームで見てみると神戸31.04億、浦和26.44億、鹿島23.82億、川﨑23.39億、C大阪23.34億に次いで6番目となっています。神戸はポドルスキー分でしょう。

レイソルは3月決算ですので、今期の23億は、17年4月から18年3月までの移籍加入が加わっているものと思われます。期間中にあった主な動きとしては、細貝(17年3月なので16年度の計上かもしれません)、キムボギョンの獲得とオフシーズンのパクジョンス、江坂、小泉、山崎、瀬川、亀川あたりになります。

また、クリスやユンソギョンなどは契約更新があったと現地メディアで報じられてますのでその上乗せ分や、過去の移籍金も契約年数で割った分を計上していると以前意見交換会で説明がありましたので、そうしたモロモロが入っていると思われます。

支出全体におけるチーム人件費の割合は、67.09%と昨年の61.94%よりさらに上回っています。J1では断トツの1位で、ポドルスキ加入で大きく増えた神戸の58.16%よりも10ポイント以上高くなっています。
全体の支出に占める人件費の割合が多いのは、そういう戦略ですと言われてしまえばそれはそれで(他に悪影響が出なければ)仕方ないのかもしれません。

DAZNマネーもあること。ACLもあることで、昨シーズンから今シーズンにかけてレイソルはかなり勝負をしたのではないかと推測します。それくらい一気に人件費が増えています。惜しむらくはその結果が今のところほぼ出ていないことでしょうか。計画通りの絵に描いた結果が出ていればDAZNマネーも獲得でき、ほっと一息つけたのではないかと。そんな風に推測しました。

一方、試合経費、チーム運営費、販管費はかなり減らしています。試合経費(1.58億円)でみると、J1の他チームで1億円台で試合経費をやりくりしているのは、仙台(1.63億円)、甲府(1.03億円)くらいです。J2だと千葉(1.56億円)、京都(1.45億円)と同じくらいです。

さてどうする
赤字こそ出ていませんが、置かれた現状から楽観視はあまりできません。

営業収入を増やすには
・広告料収入
→新たなスポンサー獲得
→何もやっていない訳ではなく、ローソンやアリオなどは比較的新しいスポンサーです。
→三協フロンテアさんのネーミングライツ分は来年発表される個別経営情報まで待たなければ分かりませんが、営業も動いているとは思います。
→ただ、日立台という限られたキャパシティに加え、日立製作所のクラブと言うイメージが強いことは新規スポンサー獲得のネガティブ要因と言えます。

・入場料収入
→2016年度と比べると2017年度は年間平均観客動員で1,000人の増加となっていました。
→それでもおよそ5千万の増加にとどまっています。
→2018シーズンはACLの関係で平日が多いことから、来年の数値は悪化すると思われます。
→では単価=チケット価格を上げたらどうなるか。
→消費税増税分で少し価格が上がったことはありますが、基本的に05年くらいからチケット価格は据え置きです。
→日立台のチケットは他クラブに比べ若干割安ですので、少し上げることもできるはできますが、動員を減らしてしまうかもと言うリスクもあります。
→また、仮に値上げしたとしてもキャパを考えると、営業収入への効果は限定的だといえます。
→あとは考えられることとして、「レイソルに金を落としても良い。もう少しお金を払っても良い」と考える個人の方から収入を増やすアイデアでしょうか。例えば鹿島のフリークスSOCIOメンバー(12万~100万円)や名古屋のプラチナファンクラブ(3万円)といった高額会員組織を新規で立ち上げるなどが該当するかと思います。

・お気に入り選手の背番号付きのプロ支給モデルユニフォームを開幕前に必ず届ける
・シーズン前の決起集会的なもの(後援会のやつみたいなの)に参加できる
・ロイヤルシートを年間数試合招待券付きで開放する(駐車場付き)

・ロイヤル会員だと分かるような何か(ピンバッジとか会員カードの色が違うとか)をプレゼント
みたいな組合せで、高額会員組織を作るみたいな案でしょうか。
仮に5万円だとして1,000人集まれば5,000万です。2,000人なら1億円です。
レイソルの会員が1万人前後だったはずなのでそう簡単に人数集められないかもしれませんが。

・グッズ収入増
→ここは他クラブと比べると相当少ない金額となっています。そのままは鵜呑みにできない(Jリーグの注釈によれば、代理店に委託販売しているケース等もあることから、取扱い高総額でのクラブ間比較はできないとのこと。代理店に委託している場合は「その他収入」の方でカウントしてるということでしょうか。)のですが、他J1クラブと比べると、浦和8.13億、鹿島6.99億、川﨑5.63億と比べるとその少なさが目立ちます。観客動員や入場料収入で同じくらいのチームと比べても1億未満というのは改善の余地がありそうです。
→とはいえここも営業収入への効果は限定的です。

・優勝などの賞金獲得
→運にも左右される賞金を予算上の柱に据えることは経営的にはできませんね。DAZNマネーの「理念強化配分金」は喉から手が出るほど欲しいのですが、今シーズンはそんなこと言えない順位ですし。

・選手の移籍金収入
→ここ数年連発したアカデミー出身者の移籍金ゼロでのフリー移籍(山中、茨田、工藤など)。
→報道では昨シーズン末の武富や今シーズン途中の中谷と移籍金がとれているようです。
→育成して他のクラブに選手をきちんとお買い上げいただくのは非常に大事だと思います。
と見ていくと営業収入を増やす効果的な施策はあまりなく、

・きちんと移籍金を払ってもらう
・スポンサーや入場料などはコツコツやっていく(それをするスタッフが足りないのかもですが)
くらいしか浮かびません。

また、支出で見ても、もう削れるところはないですよ。おそらく。
もっとも削れる、見直せることができるのは、一番お金をかけている人件費でしょうか。
全体の支出に占める人件費の割合が多いのは、そういう戦略ですと言われてしまえばそれはそれで(他に悪影響が出なければ)仕方ないのかもしれません。ただ問題なのは、結果にマッチしていない大型契約と特に外国籍選手の当たりはずれの確率でしょうか。もちろん勝負事ですので獲得した選手の当たりはずれは読めないところもあるでしょうが、レイソルの場合その確率が非常に悪い(気がする)上に、失敗を繰り返して(いそう)なところがとても問題なのではないかと思います。

エデルソンとの長期契約をしたにもかかわらず、ユンソギョンとも同じように長期契約をしている(韓国メディア報道通りだとすると)。二人ともレンタルで出してしまった。
お金の面では中堅規模のクラブになってしまっているにもかかわらず、外国籍選手との契約は昔のまま大盤振る舞いを繰り返している。結果が出れば良いが、出なかったときに経営的に大きな痛手となる。そこがなかなか改まらない。このあたりはかなりモヤモヤするところです。

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