毎年7月後半に公開されるJリーグ個別経営情報開示資料。柏レイソルは3月決算のため発表時期が7月です。
・2024年度(令和6年度)Jクラブ経営情報開示(公式)
・2024年度クラブ経営情報開示資料(本発表)(公式)
という訳で例年のようにP/L中心に見ていきます。
前提
・レイソルは3月決算のため、2024年度(令和6年度)は基本的には2024年4月から2025年3月までの動きが対象です。
柏レイソルの2024年シーズン
・井原体制2年目。前半戦は5勝7分6敗と勝ち切れないものの負けない試合を展開。
・夏以降は4勝7分9敗と失速。20チーム中17位で辛うじて残留となったシーズンでした。
・特にリーグ戦終盤は5試合連続でATに失点。勝点8を失うなど勝ち切れないシーズンを象徴していました。
・シーズン終了後井原さんの退任が発表され、リカルド・ロドリゲスの就任が発表されました。
・コーチ陣の動きでは、OUTは少なく、新たに加わったメンバー+既存のコーチという組閣。
2024年度の移籍動向 シーズン中の移籍(IN/OUT)
・7月:垣田選手が鹿島から加入。高嶺選手がベルギーへ移籍。
・8月:手塚選手が鳥栖から復帰。武藤選手が相模原へ移籍。山本選手、真家選手が栃木と琉球へ期限付き移籍。
2024年-2025年 シーズンオフの移籍(IN/OUT)
・OUT:フロートがデンマークのオーデンセ、升掛選手はブラジルマリンガFC、関根選手はフランスのランスへ移籍。国内だとサヴィオが浦和、守田が町田、立田が岡山、落合が新潟、加藤が宮崎へ、岩下は古巣熊本へ移籍となりました。
期限付き移籍は、川口選手が磐田へ。佐々木(岡山)、モハ(琉球)、ウィリー(岐阜)、山本(山口)、土屋(甲府)、鵜木(いわき)の7人。佐々木、モハ、真家、山本は育成型の期限付き移籍です。
サヴィオさんの移籍金は300万ドル。ただしフラメンゴが一部パスを持っているらしく柏に入るのは3億円ほどとの報道が。関根くんの移籍金は1億円(65万ユーロ)との報道もありました。
・IN:大卒ルーキーは、桒田、中川、中島、古澤の4名。田中選手が期限付き移籍から復帰となっています。
それ以外はリカルド監督がピックアップした選手が加入しています。仲間、久保、小島、原田、渡井、小泉、坂田、杉岡、原川、成瀬と10人。大卒4人を加えると14人が新加入というのはなかなかないシーズンオフでした。
今回発表分のポイント
今回のリリース前に気にしていたポイントがいくつかあったので整理します。
①ファンサービス・イベントへの予算執行
2023年4月に就任した山崎社長。懸案事項の1つだったと思われる債務超過は2023年度に解消できました。債務超過解消があって井原さんは補強で割を喰った可能性が大きいと思うのですが、何とかチームが壊れることなく残留を果たしてくれました。第2期ネル政権からの井原さんという流れが終了を迎え、新たな時代へという橋渡し的なシーズンだったということになります。 柏のファンサービスが少しづつ変わってきた?と言われ始めたのも2024年シーズンだったかので、その辺りのお金のかけ方にも注目です。
②移籍金(IN/OUT)
今回発表分から移籍補償金についての開示が進みました。INとOUTそれぞれ国内、海外でいくらかけたかが分かることに。減価償却の考え方もあって個々の移籍に対しての特定は難しいのですが、興味はつきない話題です。柏のお金のかけ方は他のクラブと比べてどうなのかという視点で見ていきたいと思います。
8/1追記:移籍金ですが5月発表時はIN/OUTそれぞれ国内、海外の数字をゲキサカが報じていましたが7月発表分はまだみたいで分かりません。追加情報を待ちたいです。
③入場料収入
昨年2023年度は、入場者数でみると前年比(対2022年度比)でプラスの推移=入場者数増加傾向となっていたにもかかわらず、入場料収入を見ると前年よりマイナスとなっていました。この辺りがどうなっているかも気になるところです。
参考:
2023年度:リーグ戦 17試合189,214人(1試合平均11,130人)+カップ戦 3試合16,310人(1試合平均5,437人)で205,524人
2022年度:リーグ戦 15試合157,497人(1試合平均9,265人)+カップ戦 3試合10,056人(1試合平均3,352人)で167,553人
2023年度:入場料収入 4.13億円
2022年度:入場料収入 4.82億円
営業収入(全体)
前提を振り返りましたので、例年のように収入から見ていきます。Jリーグクラブの収入は、大きく「スポンサー」「入場料」「放映権(Jリーグ分配金)」「その他」に分類されます。Jリーグが発表している【Jリーグ クラブ経営ガイド】には、収入費目の内訳が記載されているので去年の資料からですが引用します。
![]()
引用元:Jリーグ クラブ経営ガイド 2024 38ページ
総収入
流石に20年近くなると表組は見づらいので止めます。レイソルの2024年度営業収入は46.58億円で2022年度の過去最高額を若干更新しました。(2022年度46.32億円)
Jクラブ全体での立ち位置を見てみます。2024年度営業収入額を上から順に並べると、浦和(102.11億円)、川崎(84.03億円)、神戸(80.67億円)、広島(80.35億円)、マリノス(73.33億円)、G大阪(72.23億円)、鹿島(72.00億円)、FC東京(69.89億円)、名古屋(68.74億円)となり、9クラブで60億円を超えています。次いで、町田(57.54億円)、C大阪(54.01億円)、清水(50.03億円)、札幌(50.0億円)でここまで13クラブが50億円超え。50億円を超えたクラブは前年度の9から13と大きく増えています。磐田が48.52億円で柏の46.58億円は15番目。全60クラブですのでちょうど上位25%に当たる位置付けです。
●営業収入規模とクラブ数の変化
50億円超えクラブ:19年度8→20年度4→21年度7→22年度9→23年度9→24年度13
40億円超えクラブ:19年度9→20年度10→21年度9→22年度12→23年度14→24年度16
30億円超えクラブ:19年15→20年度13→21年度15→22年度15→23年度18→24年度22
全60クラブのうち1/3以上の22クラブが30億円の売り上げを記録していることになります。
●J1リーグ平均営業収入額
2019年度:49.51億円
2020年度:38.36億円
2021年度:42.37億円 ※20チーム
2022年度:47.02億円
2023年度:52.01億円
2024年度:58.24億円 ※20チーム
J1所属クラブの平均営業収入(売上)は58億円を超え60億円に手が届くところまで来ています。J1所属クラブの平均売上は、10年前の2013年度が30億円程度でしたので拡大の一途です。DAZNマネーの恩恵と言えるでしょう。ただし、J2所属クラブの平均営業収入は19.35億円と前年度20.48億円から約1億円のマイナス。J3では8.65億円と前年度6.55億円から2億円のプラスとなっています。このあたりはカテゴリーの所属クラブで違ってくるので、J1~J3 60クラブの平均で見たほうが良さそうです。全60クラブの平均は2023年度の25,3億円から2024年度は28,74億円と増加していることが分かります。
営業収入(レイソル)
スポンサー収入
ココからはレイソルの各費目にフォーカスします。スポンサー収入は、2023年度31.11億円から2億円ほどマイナスの28.45億円。2015年度から8期連続で増加中でしたが、マイナスでの推移となりました。スポンサー収入で見ると浦和(41.08)、町田(40.43)、川崎(40.29)、東京(29.89)、磐田(28.49)、柏(28.45)と5番目になります。
ちょっと古くなっていますが、毎年引用させてもらっている2017年の意見交換会のコメントを引用します。
(2017年当時)30億ちょっとの総売上のうち、スポンサー料(19.5億円)が大半を占めています。(総売上)30億のうち13億は日立からいただいているスポンサー料です。その他6億は日立グループが主な相手先となるスポンサーで、当然その他にも地域の中小企業さんからご支援をいただいております。 2017年柏レイソル意見交換会議事録
2010年度(19.98億円)から2018年度(19.68億円)まで、スポンサー収入の額が20億円くらいの時代は、65%~70%にあたる13億円が日立製作所からの支援だったということになります。
以降、2018→2019に19.68億円から22.06億円に増加。これは三協フロンテアさまのスポンサード(2018シーズンから) が要因と推測します。(※2018年01月24日リリース。2018シーズンからスタジアムのネーミングライツとユニフォームのスポンサー契約を締結。スポンサー収入では2018年度は金額の変動がなく、2019年度で増えている)
2019→2020に22.06億円から28.93億円に増加。これは複数の要因が推測でき、1つはユニフォームスポンサーの拡大(2018、2020シーズン)2018シーズンからユニフォームの鎖骨位置にスポンサーが許可され、2020年6月にはパンツの背面も解禁に。
もう1つは2021シーズンから2024シーズンまでLumadaがユニフォーム胸位置に表示されていたことによる増額。
2021シーズンより日立ロゴに加え、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称である「Lumada」ロゴも掲出。 2021年02月02日(火)『2021シーズン ユニフォームスポンサー』のお知らせ
2025シーズンからはLumadaが外れて会社名のみとなっています。対前年度2億円ほどのマイナスは、Lumada分が減ったというのも理由ではないかと思います。加えて、日立グループは統廃合を進めており結構子会社が売却されたりしてスポンサーだった会社が離れたというのもあるかもしれません。
時間があったらスポンサー数を数年比較してみたいと思います。たしかそんなものをエクセルでまとめていたことがあったような記憶が…。
入場料収入
入場料収入です。2023年度4.13億円から2024年度は6.23億円と大きな増額となりました。6.23億円は2013年度(6.46億円)に次ぐ歴代2番目の金額です。最近はチケットも取りづらくなるほど入場者も増えていますしこれは良い傾向かと。
リーグ戦とカップ戦で単価を出してみると、2023年度はリーグ+カップ205,524人で4.13億円でしたので2009円ほどでした。これが
2024年度はリーグ+カップ237,558人で6.23億円。平均客単価は2,622円まで回復しています。
とはいえ新スタジアム効果の広島さん、チケット価格を高めに設定している福岡さん、ダイナミックプライシングが物議をかもす札幌さんは3,500円前後まで伸びています。柏のチケット価格は他と比べても安いので個人的には痛いところですが伸びしろはあると思います。
Jリーグ配分金
Jリーグからの配分金です。こちらは2.85億円で2023年度2.95億円より1,000万円減、ほぼ維持と言ってよい数字になっていました。コロナ後Jリーグは緩やかに傾斜配分に舵を切っていることもあり、成績とキャパシティ的に振るわなかった柏は少ない金額しかもらえない事情となっています。
ちなみに配分金はJ1で19位(最高は浦和の6.79億円、鳥栖が2.73億円で最下位)。J2クラブの最高は清水の1.35億円なので倍の開きがあります。J2最下位は藤枝で1.01億円。同様にJ3最高は松本の0.34億円、最下位は相模原の0.17億円となっていました。
配分の条件を下記に引用しておきます。
シーズンの成績に基づいて翌年度(2024年度)から支給が始まる「理念強化配分金」(総額21億6000万円)がコロナ禍による一時停止を経て4年ぶりに復活。一方、カテゴリ別に配分される「均等配分金」は昨季比1億6000万円の減額となり、Jリーグが推し進める“結果配分”へのシフトが始まる形となった。 理念強化配分金はDAZNの放映権取得とともに2017年に始まった制度。①日本サッカーの水準向上およびサッカーの普及促進、②若年層からの一貫した選手育成、③フットボール環境整備、④選手や指導者の地域交流および国際交流の推進ならびにスポーツ文化の振興—という目的に照らし、Jリーグ理事会の承認を経て配分金が与えられる。 Jリーグ配分金は“均等”から“結果”へ!! 理念強化金がJ1上位9クラブに拡大、降格救済金は今季限りで廃止(ゲキサカ 2023/1/31)
【理念強化配分金】 ■競技順位による配分金(表1) ■人気順位による配分金(表2) ※人気順位=2023シーズン年間ファン指標順位(DAZN視聴者数など) 【ファン指標配分金】 全Jクラブに対しての 総額約13.4億円を、2023シーズンのDAZN視聴者数やDAZNシーズンパス販売実績などで配分したもの 引用元:2024年度理念強化配分金の支給対象候補クラブ および2023年度ファン指標配分金支給対象クラブ決定((Jリーグ公式)
その他収入
今回の発表から移籍金が別枠となっていますが、経年の比較のためまとめてここに記します。柏の収益を左右する最大の要因が「移籍金を含むその他収入」でしたのでそこがある程度開示されることになります。数年前に物販が切り離され、賞金も切り離されたので、残る「その他収入」とは何ぞやとなりますが、Jの経営ガイドを見るにサプライヤー収入、ファンクラブ収益などのようです。柏の場合はヨネックスさんとかコカ・コーラさん、スーツのSADAさんなどになります。
賞金
2023年度はリーグ戦、カップ戦、天皇杯と奮いませんでしたので大きな金額の賞金は含まれておらず可能性があるとしたら天皇杯で勝ち進んだ際の勝利金的な分が少々と思います。
物販
柏は他クラブと異なり加茂さんにほぼすべて委託しているため物販費目の計上は100万円が何年も並んでいますが、2022年度は0円、2023年度は1,100万円と多少計上されたりしてます。この金額が何にあたるのかはちょっと分かりませんが2024年度も700万円ほど計上されていました。過去の意見交換会の説明を引用します。
なお、この金額(=物販収入)ですがグッズについては、企画、仕入、販売の一連を加茂商事さんへ委託しております。開示されている金額が全ての売上高という訳ではございませんので、他クラブと比較して突出して少ないという訳ではありません。商品化事業をアウトソーシングをすることで、在庫高や販売にかかる諸経費を大きく削減しております。 2020年レイソル意見交換会
移籍金収入
レイソルの2024年度は2024年4月から2025年3月までですので、この間に移籍していった選手の移籍金が計上されます。一般的に受け取り移籍金は移籍したシーズンに一括で計上されたはずです。フリー移籍であれば当然0円です。
2024シーズン、2024-25オフシーズンの移籍でお金が発生してそうなのは報道ベースで、2025年1月のサヴィオ選手(推定3億円)、同関根選手(推定1億円)に2024年7月にベルギーに移籍した高嶺選手(推定1億~1.2億円)です。この3人の報道金額を合計すると5~5.2億円ほどになります。
今回発表された移籍金収入は6.58億円でしたので、報道が正しいとすると差額は1.5億円ほどに。あながち報道の金額の精度は悪くないと思うのですがどうでしょうか。
なお、そもそもの受け取り移籍金は一括で計上という前提が違っていれば大外れな推測になりますが…。
費用(売上原価+一般管理費)
支出の方も収入と同じように【Jリーグ クラブ経営ガイド】の費目を確認するところから始めます。Jリーグ経営ガイドは2024年版が最新です。2023年度から個別経営情報の費目が変更になっており、チーム人件費がトップチーム人件費(監督・スタッフ報酬)とアカデミーの人件費が分離されています。アカセミーの監督・スタッフ費用はアカデミー運営経費に計上しているはずです(販売費および一般管理費にあるかもしれない)。また、柏の場合はそのままアカデミーの経費にスライドしているっぽいのですが、クラブによっては育成組織を別法人・団体で運営しているところもあります。そうしたクラブの場合は極端にアカデミー運営経費が少なくなるなどがありえます。
引用元:Jリーグ クラブ経営ガイド 2024 41ページ
総費用
ココから支出です。まず支出ですが、先ほど書いたように2022年度分から費目が変更になっています。 ①営業費用という費目が、売上原価+販売費および一般管理費に分けられた ②人件費は従来すべてのチームの人件費だったものが、【TOPチーム】のみに変更になった点です。
柏を例に挙げると、2021年度発表のチーム人件費は31.05億円でしたが、2022年度発表資料を見ると、TOPチーム人件費は30.33億円とやや少ない金額となっています。この差分がレイソルの場合はアカデミーの人件費にあたるものと思われます。※他のクラブの場合、育成や女子を別法人としてしているクラブも少なくないので注意が必要です。
経年変化はなるべく同じ指標で見る必要があるので、これまで発表されていた営業費用(営業原価+販売費および一般管理費)を総支出として見ていくことにします。費目によってはJリーグ発表のものと定義が同じではなくなりますが比較優先でいきます。ただし、内訳そのものが変わっていれば分からないのでそこはご容赦ください。
2024年度は42.17億円(売上原価33.70億円+販管費8.47億円)
2023年度は38.97億円(売上原価30.09億円+販管費8.06億円)
2022年度は45.15億円(売上原価37.03億円+販管費8.12億円)
2021年度は42.75億円
2020年度は46.15億円
と推移していることが分かります。山崎社長1年目だった2023年度は営業費用を大きく減らしていたことが分かります。営業費用にはチーム年俸はもちろん、獲得移籍金や施策の費用も含まれますので、井原体制はちょっと補強の面では我慢していただいたことになるのかなと思います。
販管費は昨年から今年にかけてやや増加しています。一方、被保険者数を調べると大きく増えていないので人件費よりはプロモーション的な費用の可能性があります。※試合に関するイベントの費用は試合関連経費で計上していると思われるため、動画配信とかWeb施策とかそっちが販管費扱いでしょうか。費用の割り振りルールは開示されていないので分かりませんが。
TOPチーム人件費(チーム人件費)
レイソルの営業費用で大きな割合を占めるチーム人件費です。前述のとおり2023年発表分から定義が変更になっています。それまではアカデミーの人件費も含まれていましたが、TOPチーム人件費のみに変更となっています。
TOPチーム人件費 チーム人件費(2021年まで)
2024年度 21.21億円(50.2%)
2023年度 26.54億円(68.1%)
2022年度 31.88億円(70.6%)
2021年度 30.33億円(70.9%) 31.05億円(72.6%)
2020年度 27.89億円(60.43%)28.79億円(62.38%)
2019年度 29.40億円(69.9%)
2018年度 28.06億円(68.0%)
2017年度 23.08億円(67.1%)
2016年度 17.53億円(61.9%)
TOPチーム人件費は21.21億円。歴代最多だった2022年の31億円と比べると2年で10億円を削減したことになります。やはり井原さんには相当我慢してもらったこと、ネルシーニョ政権がいかに高コスト体質だったかが分かります。まずはその状態からの脱却を図ったとみてよいでしょう。人件費率も50.2%と柏では見たことがないほど低い数字に抑えられています。
以前は支出をできるだけ人件費に割く。70%近くなっても構わないという経営戦略を採用していましたが、まずは適正な水準に戻すという感じなのでしょうか。こう見ると逆に来年発表のリカルド体制でどうなったかがとても気になります。ある程度の幅の中で獲得しているのか以前のように70%近くに戻ってしまうのか。レイソルは3月期決算なのでリカルド体制の一部は計上していると思われるので、リカルドになったから急激にネルシーニョ時代の割合や金学に戻るということは2024の数字を見る限りなさそうではあります。ただ、2025年シーズン途中の瀬川さん、小見さん、馬場さん、小西さんはそれぞれ移籍金が掛かっていてもおかしくない選手なので来年発表される数字は上振れするかもしれません。それでもネルシーニョ末期を基準に置くとだいぶ金額は少なくなっています。
移籍関連費用
今回発表分から移籍関連費用が開示されています。柏は7.32億円が計上されています。
これには2024年4月~2025年3月までに獲得した選手の移籍関連費用が一部含まれているはずです。(獲得のために支払った移籍金は、その選手の契約年数で減価償却していくんだった記憶が。収入とは異なり一括計上しないので過去の獲得選手分も含まれていると思います)
2024年シーズン途中からの獲得で行くと、垣田さん手塚さん。オフシーズンの仲間さん、久保さん、小島さん、原田さん、渡井さん、小泉さん、坂田さん、杉岡さん、原川さん、成瀬さんが加入しています。移籍金が掛かっていそうな選手も多いと思われ、合計して7.32億円という金額になっています。(前述の理由から2024年以前の獲得選手分も計上されているはずです)
ちなみに7.3億円の移籍関連費用は全体で見ると川崎13.16億円、浦和7.84億円、町田7.47億円に次ぐ4番目となっています。5月の発表時点では国外からなのか国内からなのか内訳まで出ていたと思うのですがちょっと見つけられません。最も柏は全部国内ですが。
それ以外の支出項目
その他の支出項目では、試合関連経費(ホームゲーム開催費)は1.78億円と2023年度1.15億円から金額的には少しですが比率では大幅に増えています。10年以上前2013年に1.98億円使った年がありましたが、その後は試合関連のイベントなどが縮小されており金額も1.2億円前後で推移していたことを考えると大幅増です。このあたりは試合前イベントや取り組みの現れと推測します。
トップチーム運営経費は、1.75億円でした。2023年度は1.76億円なので横ばいです。コロナ真っ最中の2020年に8億円以上を計上した年がありましたし、2022年度2.50億円、2021年度1.99億円でしたが、2年連続で同じくらいの規模感となっています。ちなみに、トップチーム運営費には、チームの移動経費、キャンプ費、施設や寮関連の費用などが含まれます。柏はスタジアムはじめ練習場もクラブハウスもほぼ自前(厳密には日立様?)ですのでこの費用は他のクラブと比較しても圧倒的に少なくなっています。J1では断トツで少なく、J2でも真ん中より下に位置するくらいの費用です。
収支について
好調な経営
・2019年度 3度目のJ2降格を救ってもらうためにネルシーニョ監督を再招聘しチームを救ってもらいました。ただしクラブとしてはこの時に10億円の赤字となり貸借対照表を痛めてしまいました。
・2021年度 チーム人件費の高騰+コロナ禍もあって単年で4億円の赤字となり3.6億円の債務超過に陥ってしまいました。レイソルで言えば2度目の降格をした2009年度以来となる債務超過状態となりました。
・2022年度 1億円の利益を出すことができました。債務超過はクリアできなかったものの回復基調に乗りました。
・2023年度 ネルシーニョとのお別れが先なのか、コンパクトな経営が先なのかは判断に迷いますが(退任したネルシーニョが今年は「お金がない…」的なこと言ってた記憶があるのである程度緊縮傾向だったと思っています)4.9億円の利益を出すことができ懸案だった債務超過も解消されました。
この動きを経て
・2024年度 当期純利益は4.36億円となりました。2年連続4億円以上の利益を出すことに成功しています。利益剰余金も3.64億円のマイナスまで回復しています。この2年で急激に回復していることが分かります。
レイソルは成り立ちからして利益をめちゃくちゃ出す必要がない(と言ったら怒られるかもですが)と思っている(=もともと日立製作所の福利厚生的な位置づけ)ので、利益をバンバン出す決算にはなっていませんでした。3年連続で1億円以上の黒字となっていますが、経営情報が開示されて以降1億円以上の黒字は優勝特需の2011年しかなく、黒字をだしても数千万円の下の方、赤字を出しても数百万円みたいなお役所っぽい動きになっていたという経緯があります。
こうなると次は利益剰余金のマイナスを解消することになると思うのですが、これを達成すると逆に買われやすくなってしまうんじゃないかとちょっと思ったり。財務的には良い傾向だと思うのですが、急激に黒字を出している裏側に何があるのか、何もないのか気になるところです。自分は財務や会計の専門家ではないので表面的な数字を表面的にしか見れないので、何か意図があるのかないのかもわからないのですが、ここ数年急に黒字出しているので気にはなります。
シン・レイソル
追記しました。
柏レイソルの勝手なイメージは、チーム(TOP)にはお金をかける。外国人選手にはかなりお金を使うイメージがありました。古くはカレカ、ストイチコフ。韓国人トリオの時代(ホンミョンボ、柳想鉄、ファンソンホン)、暗黒時代の初代ドゥドゥ、フランサ、レイナウド。初優勝したジョルジ・ワグネル、レアンドロ・ドミンゲス。その後もキムスンギュ、クリスティアーノ、サヴィオ、オルンガなどなど良い選手をいっぱい獲得してきました。フィットして当たれば成績も上向くが、外国人選手だけで優勝できるほどJリーグは甘くなくといった状況です。なのでチーム人件費はかなり高め。収入の7割をぶち込むくらい、社運をかけてそこにお金をあてがって来ました。
ちょっと縦長になりますが、年度毎にチーム人件費とチーム人件費の順位、シーズン順位を並べるとこんな感じ。シーズン順位と比べるとチーム人件費の安定っぷりが際立って見えるくらい背伸びしてお金を投じてきたわけです。
2009年 15.80億 9位 16位降格
2010年 14.85億 8位 J2優勝昇格
2011年 19.19億 4位 J1優勝
2012年 20.47億 1位 6位
2013年 21.18億 2位 10位
2014年 20.59億 1位 4位
2015年 18.88億 5位 10位
2016年 17.53億 8位 8位
2017年 23.08億 6位 4位
2018年 28.06億 5位 17位降格
2019年 29.40億 5位 J2優勝昇格
2020年 28.79億 7位 7位
2021年 31.05億 3位 15位
2022年 31.88億 3位 7位
2023年 26.54億 7位 17位
2024年 21,21億 13位 17位
ですが、これが少し変わろうとしている。今年発表分は2024年度なのでリカルド新体制の費用は一部だけの計上と思われますが、それでも明らかにお金をかけていない。これまで、強くなるためには選手獲得にお金をかけることをファーストチョイスにしてきたクラブが、別のやり方を模索している。リカルドさんの指向するサッカーを軸にそこにフィットしそうな選手を、言い方めっちゃ失礼だけど、そんなに有名じゃない選手でもフィットしそうな選手を連れてきて強くなろうとしている。
しかも今シーズンそこまでこのチョイスがほぼ当たっている。例外なく、新たに獲得してきた選手が活躍している、怪我で離脱した選手が出ても次から次へと穴を埋める選手が出てきている。
こんなシーズン見たことない。これがたまたま今年お金がかかっていないだけなのか、来年には元に戻るのかは分からないけど、新しい柏が始まっている感じをとても受けています。
なのでなので、このシン・レイソル=リカルド監督の野心的なチーム作りとそのサッカーが10数年ぶりのタイトルという成果をもたらしてくれることを願うばかりです。でもって久しぶりにアジアの舞台に連れて行って欲しいなと。浦和さんが参加したクラブワールドカップを見てつくづく感じました。世界は遠いかもしれないし、世界へ続く道はそう簡単ではなく険しい道のりだけど、決して繋がってなくないよと。細いかもしれないけど繋がっているんだぞと。
Vamos reysol!